片麻痺のリハビリ、上肢の自主トレーニングを重症度別にご紹介





「少しでも早く上肢の動きを改善したい」

「片麻痺の重症度に合わせたトレーニング方法を知りたい」

「家でできる自主トレ方法を知り、片麻痺になった家族の能力を改善させたい」


など、片麻痺の改善に対するトレーニング方法を知りたい方は多いと思います。


1日のうち、病院や施設でリハビリを受けられる時間は限られているため、家でできる自主トレーニングを行うことは、麻痺の改善に大変有効です。

しかし、自己流の適切でないトレーニングを行うと、逆効果になる場合もあります。

トレーニングの方法は、片麻痺の重症度によって異なります。


この記事では、片麻痺の重症度別リハビリテーション、上肢の自主トレーニングプログラムについてご紹介します。




【目次】


片麻痺の上肢におけるリハビリテーション

片麻痺の重症度別、上肢の動き

1)「肩と腕」の動きの重症度  

◉軽度の場合

◉中等度の場合

◉重度の場合

2)「指」の動きの重症度 

◉軽度の場合

◉中等度の場合

◉重度の場合

片麻痺の重症度別、上肢の自主トレーニング

1)「肩と腕」の自主トレーニング 

◉軽度の場合

◉中等度の場合

◉重度の場合

2)「指」の自主トレーニング 

◉軽度の場合

◉中等度の場合

◉重度の場合

まとめ




片麻痺の上肢におけるリハビリテーション


脳卒中の片麻痺で、下肢は良く回復していく一方で、上肢はなかなか回復せず、実用的に使えないという方は少なくありません。


また、体全体のバランスをとろうとすると、麻痺側の肘や指が勝手に曲がってしまうなど、思うように上肢を使うことができない場合もあります。


さらに、麻痺によって関節が固くなってしまうと、動かせる範囲が狭くなってしまいます。

人間の体は、手や足が単体で存在し動くのではなく、全て繋がって機能していることを忘れてはなりません。


片麻痺の上肢におけるリハビリテーションでは、単に麻痺側の腕や手だけを動かすのではなく、姿勢やバランスを意識したり、日常生活で麻痺側の上肢を積極的に使ったり、麻痺側だけでなく両手で動作を行うなどの工夫が必要となります。


そして、リハビリテーションでは「目標を定める」ことが大切です。

具体的な目標を立て、それを達成するためにトレーニングを行うことで効果が高まります。



片麻痺の重症度別、上肢の動き


自主トレーニングを行う前に、まず片麻痺の重症度を把握しておくことが必要です。

ここでは、脳卒中片麻痺による上肢の運動機能について、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)という測定方法を参考に、分かりやすくご紹介していきます。

以下に手順を示しますので、実際に測定して重症度をチェックしましょう。

※右片麻痺を想定した画像を掲載します。




1)「肩と腕」の動きの重症度 

【測定方法】


①椅子に座ります。


②麻痺側の手で健康な側の膝(または太もも)を触ります。





③麻痺側の腕全体を挙げながら、手を口まで運びます。この時、肩は90°外に開きます。





④口まで運んだ手を、膝(または太もも)まで戻します。


⑤①〜④を3回繰り返します。


※肩や肘が固くて曲がらない場合は、曲がる範囲内での運動で問題ありません。



◉軽度の場合

・健康な側と変わらず、正常な動きが可能です。

・全て行うことが可能ですが、軽度のぎこちなさ(スムーズではない状態)があります。

◉中等度の場合

・全て行うことは可能ですが、中等度のあるいは著明なぎこちなさがあります。

・肩と肘が共同的に動いてしまい、手が口に届きません。


◉重度の場合

・肩のわずかな動きはありますが、手が乳頭に届きません。

・全く動きません。




2)「指」の動きの重症度 

【測定方法】 


①親指から小指の順に、指を1本ずつ曲げます。


②小指から親指の順に、指を1本ずつ伸ばします。



◉軽度の場合


・健康な側と変わらず、正常な動きが可能です。

・全て行うことが可能ですが、軽度のぎこちなさがあります。


◉中等度の場合


・全て行うことが可能ですが、中等度のあるいは著明なぎこちなさがあります。

・全ての指を1本ずつ動かすことは可能ですが、曲げ伸ばしは不十分です。


◉重度の場合


・わずかな動きがあるか、または全ての指を同時に曲げることが可能です。

・全ての指を同時に伸ばすことが可能です

・何本かの指は、1本ずつ動かすことが可能です。

・全く動きません。



片麻痺の重症度別、上肢の自主トレーニング


片麻痺の重症度を把握できたら、各々に合った自主トレーニングを行っていきましょう。

座って行う場合、仰向けや横向きに寝て行う場合など、さまざまなトレーニングをご紹介しますので、重症度に合わせ、できるトレーニングから始めて下さい。

また、トレーニングを行う時にご準備頂く物品もご紹介させて頂きます。



1)「肩と腕」の自主トレーニング 



◉軽度の場合



【ご準備頂く物】


壁、タオル、椅子、お手玉、ボール(両手で持つ大きさ)、籠



【トレーニング方法】


■窓拭きをする


窓をタオルで拭く動作を行います。

窓の下から上に向かって手を伸ばし、なるべく高い位置まで届くように意識して行います。

体を傾けず、肩の位置はなるべく固定して肘を伸ばすようにしましょう。

上肢を自由に動かせるようになるため、支える肩や、肘を伸ばす筋力をアップするトレーニングになります。


■座って座面に手を着き、お尻を持ち上げる


椅子に座り、座面に手を着きます。

お尻が持ち上がるように、手のひらで床を押し、腕の力を入れて体重を支えます。

肩や腕の筋力アップに繋がるトレーニングです。





■お手玉(麻痺側)とボール(両手)を投げる


椅子に座り、籠を前方に設置します。

お手玉を麻痺側の手で握り、籠に入るように投げます。

少しずつ籠の位置を遠ざけて難易度をあげていきましょう。

籠との距離感を意識し、力加減やお手玉を手から離すタイミングが重要になります。

ボールの場合は両手で持って投げます。

両手を協調し、同じタイミング・力加減で動かすことが大切です。





■タオルを両手で絞るように捻る


タオルを両手で絞る動作を行います。

可能な場合は洗面所でタオルを濡らし、実際に絞ると良いでしょう。

タオルを絞るためには、上肢の複雑な動きとパワーが必要です。

握力の向上にも繋がるトレーニングです。


■肩のストレッチと筋トレ


①椅子に座り、額の前で両手を組み、肘を外に開きます。


②肘を曲げて手のひらを天井にむけて両手でタオルを持ち、外側に引っ張ります。

この時、肘は体に固定して脇が開かないように注意して下さい。





②肘を曲げて手のひらを天井にむけて両手でタオルを持ち、外側に引っ張ります。

この時、肘は体に固定して脇が開かないように注意して下さい。






【日常生活でできるトレーニング】


・洗濯を干してたたむ

・アイロンがけをする

・重いものを棚の高い所に持ち上げる

・包丁を使ったり、急須から湯呑みにお茶を注いだりする




◉中等度の場合


【ご準備頂く物】


ベッド、机、椅子、タオル、ラップの芯、お手玉と籠、上肢用ペダル、ニューステップ


【トレーニング方法】


■肩と腕を多方向に動かす


①ベッドに仰向けになり肘を90度に曲げ、天井に向かって肘を伸ばして上肢を挙げます。上肢がお腹の方に倒れないよう、真っ直ぐ伸ばすことを意識しましょう。

肩甲骨がベッドから浮くように、しっかりと天井に突き上げて保持します。

この時、手のひらを外側に向けて肘を伸ばします。




 

②肘を90度に曲げて、頭に手を置きます。

 そのまま頭を上方向に触りながら上肢を動かします。

 ゆっくりと元の位置に戻ります。





③肘は90度に曲げて体に付けたまま、手を外にゆっくり倒します。

 そのまま脇を開き、肩も肘も90度になるようにします。





■椅子に座り、腕を回す


椅子に座り、机の上に上肢を置き、ラップの芯の真ん中を握ります。

ラップの芯が机に当たるように、手のひらを内・外交互に回します。

次に、机の上に上肢を置かず、肘を曲げ、手のひらを内・外と交互に回します。

それが出来たら、肘を伸ばして同様に行いましょう。





■お手玉を持ち、籠に入れる


椅子に座り、上肢をしっかりと伸ばして届く位置(床)に籠を置きます。

お手玉を持ち、上肢を伸ばして籠の中に入れます。

それが出来たら、籠を机の上(上肢をしっかり伸ばして届く位置)に置きます。

同様に上肢を伸ばしてお手玉を籠の中に入れます。

投げ入れるのではなく、ゆっくりしっかり上肢を伸ばして入れるようにしましょう。


■両上肢を交互に動かす


両上肢でペダルを漕いだり、ハンドルを持って前後に動かします。

両上肢を交互に動かすことで、麻痺側上肢の動きを改善させる目的があります。



【日常生活でできるトレーニング】


・両手で顔を洗う

・バッグを肘にかけて持つ

・新聞紙や本のページをめくる

・食事や整容、更衣、洗体などで積極的に麻痺側の手を使う




◉重度の場合


【ご準備頂く物】


ベッド、背もたれと肘置きのある椅子、鏡


【トレーニング方法】


■仰向けになり、両手を組んで上に挙げる


ベッドに仰向けになり、健康な側の手で麻痺側の手を組み、肘を伸ばしゆっくり挙げます。

挙げた状態を10秒間保持し、ゆっくりと下ろします。





■横向きに寝て(麻痺側が上)、体の前後に手を移動させる


麻痺側が上になるように横向きでベッドに寝ます。

上肢全体を体の前側から体を超え、体の後面に移動するように動かします。

次は反対に、体を超えて前面に戻るように動かします。

肩甲骨を動かすことが重要なため、結果的に上肢が体を超えなくても問題ありません。





■椅子に座り、健康な側の手で肘置きを力一杯引っ張る


椅子に座り、健康な側の手で肘置きを握ります。

肘置きを力一杯引っ張り腕を曲げることで、麻痺側の上肢が動くのを誘発します。

この運動は、上肢が全く動かない場合に行います。

連合反応(片方の手に力が入ったり、あくびをした時、もう一方の手にも力が入る反応)により、麻痺した上肢の筋肉を反応させる目的があります。

麻痺側の上肢も曲げるイメージで行いましょう。





■椅子に座り、肩を上げ下げする


椅子に座り、上肢は挙げずに垂らしたまま、肩を上げ下げします。

肩甲骨を動かす筋肉をしっかりと使う運動です。

鏡の前で動きを確認しながらゆっくりと上げ下げしましょう。





■椅子に座り、上肢を内外に動かして足を超え移動する


椅子に座り、麻痺側の上肢を足と足の間に置きます。

上肢が足を超えて外側に移動するように動かします。

次は逆に、上肢が足を超えて内側に戻るように動かします。

体ごと勢いで動かすのではなく、ゆっくりと行いましょう。





■椅子に座り、机の上でタオル拭きをする


椅子に座り、前方の机の上にタオルを置きます。

麻痺側の手をタオルの上に置き、健康な側の手で麻痺側の手を押さえて動かします。

前後左右方向、回したりなど、多方向に動かしましょう。





日常生活でできるトレーニング】


・寝返りや起き上がりの時、麻痺側の上肢をお腹の上に乗せる。

・食事やTVを見る時など、できる限り麻痺側の上肢が視界に入るように意識する。



2)「指」の自主トレーニング 



◉軽度の場合


【ご準備頂く物】


洗濯ばさみ、輪ゴム、ティッシュペーパー、コイン(将棋やオセロの駒でも可)


【トレーニング方法】


■洗濯ばさみでピンチ力を鍛える


洗濯ばさみを摘んで、はさむ運動です。

挟むものは、厚紙などの薄いものから、段ボールなど、少しずつ厚みを増やします。

摘む力は、日常生活で大変重要なので、たくさん行うと良いでしょう。


■輪ゴムを指で摘んで引っ張る


輪ゴムは細く、机の上から摘みあげるためには、手先の巧緻な動作が必要です。

また、摘んだ後に両手で引っ張り合うことで、ピンチ力を鍛えることができます。


■ティッシュペーパーを丸める


ティッシュペーパーは薄い2枚が重なっているので、指でめくってはがしましょう。

1枚ずつ、指の腹を擦り合わせながらティッシュを丸めてコヨリを作ります。

力を入れすぎるとティッシュが破れてしまい、力が入っていないと上手く丸まりません。

指先に集中し、丁寧に行いましょう。


■コインを裏返す


コイン(将棋やオセロの駒でも可)を机の上に置き、指で摘んで裏返します。

10枚のコインを裏返し終わるまでのタイムを測り、練習を重ねるごとにタイムが縮まるように練習すると良いでしょう。


■指回しをする


両手の指の腹を合わせます。

親指から小指まで、1本ずつ順番に回します。

回している指以外の指は離れないようにします。

指を回す時は、指と指がぶつからないように意識して行いましょう。





【日常生活でできるトレーニング】


・箸やペンを使う

・麻痺側の手でペットボトルや歯磨き粉の蓋を開ける

・両手でパソコンのタイピングをする

・薬の袋を開ける

・手芸をする




◉中等度の場合


【ご準備頂く物】


お手玉、ゴルフボール、テニスボール、コイン(将棋やオセロの駒でも可)


【トレーニング方法】


■ボールを握って離す


お手玉、ゴルフボール、テニスボールを用意します。

まず、お手玉を握って離す動きを練習します。

それが出来たら、ゴルフボール、テニスボールの順で練習していきます。

お手玉は小さくて柔らかく、ゴルフボールは小さくて固く、テニスボールは大きくて固いという特徴がありますので、1つずつ難易度を上げて行いましょう。


■指を1本ずつ動かす


手のひらを下にして、机に手を置きます。

それぞれの指はしっかり開き、1本ずつ指を左右に動かします。

次に、1本ずつ軽く曲げ伸ばしをします。

それが出来たら、指を伸ばしたまま1本ずつ持ち上げましょう。

※薬指と小指は、もともと指の構造上、1本だけで動かすことが難しいため、隣の指が一緒に動いても構いません。


■コインを摘んで離す


コイン(将棋やオセロの駒でも可)を掴み、離す動きを繰り返します。

コインは厚めのものが摘みやすいです。

コインが難しければ、始めは消しゴムやペンなどでも構いません。


■OK・チョキ・キツネの指をする


OKサイン→チョキ→キツネの指を練習しましょう。

それが出来たら、グーとパーの動きも加えて、ランダムに指の形を作って動かしましょう。


【日常生活でできるトレーニング】


・麻痺側の手で積極的に物を掴んだり支えたりする

・食事の際にお皿を持つ

・ペンで書く際に紙を抑える

・蓋を開ける時に瓶やペットボトルを掴んで固定する

・財布から小銭を摘んで取り出す




◉重度の場合


【ご準備頂く物】


机、背もたれと肘置きのある椅子、柔らかいボール


【トレーニング方法】


■指のストレッチをする


健康な側の手で、麻痺側の指をストレッチします。

指が曲がりやすい場合は伸ばす方向に、伸びやすい場合は曲げる方向に動かします。

指全体を同時に動かしたり、一本ずつ動かしたり、指の関節ごとに動かしたりなど、さまざまな工夫をしながら動かしましょう。





■健康な側の手で椅子の肘置きを力一杯握る


椅子に座り、健康な側の手で肘置きを力一杯握ります。

前述した連合反応により、麻痺側の指が動くのを誘発します。

この運動は、指が全く動かない場合に行います。

麻痺側の指も曲げるイメージで行いましょう。






■柔らかいボールを握る、あるいは離す


健康な側の手で、麻痺側の手にボールを握らせます。

握ることが難しい場合、乗せるような形でも構いません。

少しでも指が曲がる場合はボールを握るよう意識して指を曲げます。

少しでも指が伸びる場合はボールを手から離すよう意識して指を伸ばします。



【日常生活でできるトレーニング】


・手洗いでは、健康な側だけでなく麻痺側の手もしっかり洗うようにする。

・爪が伸びていないか、傷や腫れなどはないかなど、頻繁にチェックする。


★指のストレッチ方法について、こちらの記事も参考にして下さい。

冬に負けない身体を作ろう!~ストレッチ編【手首・指】~

片麻痺のリハビリ、上肢の自主トレーニングを重症度別にご紹介




まとめ

片麻痺の重症度別、上肢の動きと自主トレーニングプログラムについてご紹介しました。

自主トレーニングのポイントは、「重症度に合わせ、できる動きから行うこと」「両手を使った運動を取り入れること」「日常生活でも意識的に麻痺側を使うこと」です。

肩や腕、手に痛みが出る場合は無理せず、できる範囲で行うようにして下さい。