リハビリ場面で、よく『物がつかめるけど、細かい動きが苦手』、『ボタンやお箸を使うと時間がかかってしまう』というお悩みを聞くことがあります。
脳卒中(脳梗塞/脳出血)の後遺症である運動麻痺や感覚障害などにより、指先の細かい動き(巧緻動作)はやりにくくなってしまう方が多くいらっしゃいます。
今回は手、指先の動きについて手の構造やトレーニング方法、お箸やペンの使い方などについて4回に分けてご紹介していきたいと思います!
目次
手の構造
まずは、『手』がどのような構造をしているか、どう動くのかの基本についてご紹介していきたいと思います。
手の骨
手の骨は細かい骨が多く、手首から先だけでも27個の骨があります。
全身の骨の数が206個ある中で、両手を合わせると体の骨の約1/4が手の骨になります。
これらの細かい骨が関節を作り、細かい動きができるようになっています。
手の骨は手首に手根骨という8個の骨と、親指の中手骨、基節骨、末節骨、人差し指~小指にある中手骨、基節骨、中節骨、末節骨で形成されています。
これらの骨の継ぎ目が関節であり、細かく動かせる要因となっています。
手の筋肉
手の筋肉と言っても掌の中にある筋肉だけではありません。
手や指先を動かすためには掌の中にある手内在筋、掌以外にある手外在筋の2つに分けられます。
① 手内在筋
手内在筋の中にも、指を曲げるのに使われる筋肉と指を伸ばすのに使われる筋肉や外側に広げる、内側に閉じるなど様々な方向に動かすために多数の細かい筋肉が存在しています。
これらの筋肉は手のひらの中では親指側にある筋肉と小指側にある筋肉、指の根元付近にある筋肉に分けられます。
親指側の筋肉(母指球筋)
短母指外転筋 親指を外側に開いたり、指先を伸ばす
母指対立筋 親指を他の指と合わせる
短母指屈筋 親指を根元から曲げる、人差し指に寄せる
母指内転筋 親指を人差し指に寄せる、根元から曲げる
小指側の筋肉(小指球筋)
小指外転筋 小指を外側に開く
小指対立筋 小指を親指の方に向かって倒す
短小指屈筋 小指を根元から曲げる
短掌筋 掌の中にある腱膜引っ張る
指の根元付近にある筋肉(中手筋)
虫様筋 人差し指~小指を根元から曲げる、第一、第二関節を伸ばす
背側骨間筋 人差し指、中指、薬指を外側に開く、曲げる、第一、第二関節を伸ばす
掌側骨間筋 人差し指、中指、薬指を内側に閉じる、曲げる、第一、第二関節を伸ばす
手外在筋
掌で完結せず、手首や肘の近くまで伸びている筋肉を手外在筋と言います。
手外在筋は掌から肘の近くについている筋が多く、ほとんどが力強く使うための筋肉になっています。
長掌筋 手関節を内側に曲げる、掌の中にある腱膜引っ張る
撓側手根屈筋 手関節を内側・親指側に曲げる、掌を下に向ける
尺側手根屈筋 手首を内側・小指側に曲げる
長橈側手根伸筋 手関節を反らせる、親指側に曲げる
短橈側手根伸筋 手関節を反らせる、親指側に曲げる
尺側手根伸筋 手関節を反らせる、小指側に曲げる
総指伸筋 人差し指~小指を伸ばす
示指伸筋 人差し指を伸ばす
小指伸筋 小指を伸ばす
長母指伸筋 親指を伸ばす
短母指伸筋 親指を伸ばす
長母指外転筋 親指を外側に開く
浅指屈筋 人差し指~小指の第2関節を曲げる
深指屈筋 人差し指~小指の第1関節を曲げる
長母指屈筋 親指を曲げる
このように、手の機能に作用する筋はたくさんあります。
特に、手外在筋の数は多く、力を入れるために必要な筋として発達していることもあり、握りしめてしまうとなかなか開きにくいというのはこのためです。
細かい動きには手内在筋の働きが必要であり、細かい動作を獲得するためには手内在筋を中心としたトレーニングが必要になります。
指先の動き
上記でご紹介した関節や筋肉が複雑に合わさることで、様々な動きを作り出しています。
動き方については以前ご紹介した(自主トレーニングに活かす!手指の動き方)をご覧いただければと思います。
生活をする上では1つの筋肉ではなく、今回ご紹介した筋肉が複雑に動き、関与しながら細かい動作を行っていきます。
特に箸の操作やペンで文字を描く、ボタンやコインなどの細かいものをつかむ動作ではより複雑かつ、繊細な動きが必要になります。
動かすためにはある程度の筋肉の柔らかさや伸び縮みできるゆとりが必要になります。
どのあたりが硬く動かしにくいのかを確認しながらストレッチやもみほぐしなどで筋肉や関節を柔らかく保つことも大切です。
(ストレッチの方法については身体をほぐす!お家でできる手のセルフストレッチ!をご覧ください!)
ストレッチの方法や自主トレーニングの方法でお悩みの方、お気軽にご相談いただければと思います。
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